ご存知「椿三十郎」から、
入江たか子扮する城代家老の奥方の言葉です。
思えば三十郎(三船敏郎)は鞘を持たない刀、
antagonistの室戸(仲代達矢)は鞘に納まりきらない刀。
どちらもよく切れる。
そんな共通点からか、
三十郎に騙されて味方同士として語らう二人のシーンには
何とも言えない相互理解とつながりが感じられます。
・・・・などという三十郎の感想はどうでもよいのですが(笑)・・・
「鞘」が窮屈だと考える人もいるでしょう。
「見た目なんてどうでもいいやい」と思う方もいるでしょう。
でも「鞘」には装飾の有る無しに関わらず、
刀を守り、刀に気品を与えるチカラがあります。
特に刀を長期間に亘ってしまい込むときには、白鞘が使われます。
よく、任侠映画に出てくる、あの、飾りのないヤツです(笑)。
長く保管する際には刀が錆びぬよう油を塗っておくので、
普通の華美な鞘ですと、漆が剥がれ、鞘も刀も両方ダメになってしまうからだそうです。
白鞘なら、余分な油を吸いながら、優しく刀を守ってくれます。
鞘に入っていない刀は、危険です。
美しいし、力強いし、時には妖しくさえありますが、
何よりも、危険です。
相手も、自分も、怪我をする。
自分が収まるべきところ、自分が出るべきとき、
そういったものをしっかり知っているのが、
きっとこの奥方が言うように「良い刀」なのではないか、と思うのです。
ギラギラしていることは、もちろん、悪いことではありません。
でもどうせギラギラするなら、一番効果的な時にギラギラしないといけません。
ギラギラする甲斐がないなら、ギラギラしても仕方ない。
自分の汗で、錆びてしまいます。
いざというときに、鞘から飛び出し、本領を発揮する。
自分を最大限に活かしてくれる「鞘」を見つけるのも、
とても大事な過程なんだろうな、と思います。