山本周五郎原作の映画「雨あがる」より、
三沢伊兵衛の言葉です。
大切な友人のお父様が亡くなりました。
お加減が悪いことは存じていたのですが
でもだからといって悲しみがないわけではなく。
電話の彼女の声は、穏やかでした。
ああ、彼女、変わったなぁ。
でも穏やかなればこそ、そこに至るまでの彼女の心の旅路を考えると
そしてこれからも続く その路を考えると
やはり心が締め付けられます。
長く降り続く雨のように
私たちの心にもしとしとと、じめじめと、時にはザーザーと
辛いことがふりかかることがあります。
ああ、これはいつか終わるんだろうか。
辛いことがなかったときの自分が思い出せない。
傘もない。
辛いことを凌ぐ屋根もない。
ただただ打たれているだけ。
どうしても巻き戻しのできないものは
この人生に確かにあるから。
それでも、その雨は必ずやむ。
たとえ一瞬でもお日様が顔をのぞかせる。
その時に自分は上を向いているだろうか。
うつむいてはいまいか。
お日様を逃さないためには
お日様が出ることを信じていなくてはなりません。
お日様が出たからといって
悲しみや辛さがなくなるわけではなく
ただその重みと痛みが、柔らかい日差しによって
少し和らぐだけ。
それでもお日様を探して。
その友達の痛みが、少しでも早く静かに心に降り積もりますように。